#005 異文化適応能力を高めるための意識

Beyond the borders ~境界線を超えて~ #004

アイルランドで学生寮に暮らしていた私は、多様なバックグラウンドを持つ人たちと共同生活をしていました。主にヨーロッパから来た学生が多く、私が住んでいた七人部屋には、アイルランド人、フランス人、ドイツ人など、国籍も文化も異なる人たちが集まっていました。日本で育ってきた私にとって、言語も文化も異なる環境はこれまでとは正反対とも言えるもので、最初は戸惑うことも多くありました。しかし徐々に慣れていき、自分らしさを出せるようになり環境に適応していきました。  

市場価値測定テストの異文化適応値は、グラフにある通り他の基礎能力と比べると平均的が低い傾向にあります。だからこそ、私の経験が、少しでも異文化適応力を高めるヒントになればと思い、ここでは私が振り返って大事だなと思った二つのことについて書きたいと思います。 

10のビジネス基礎能力 日本人平均値を示したレーダーチャート

一つ目は、「相手に対して、好奇心を持つこと」です。
共同生活では、些細なことで衝突が起こることがありました。例えば、時間を守らない、目上の人に敬意を払うといった、日本では当たり前だと感じていたことが通用しない場面も多くありました。私は対立を避けたいタイプなので、最初のうちは自分の気持ちを抑えて、自分で解決しようとしていました。しかし、それを続けていると、次第に不満が溜まり、このままでは関係が悪くなると感じるようになりました。 

そこで思い切って話し合いをしたところ、お互いの考え方や事情を知ることができ、結果的に関係は良くなりました。この経験を通して気づいたのは、「この人はルーズな人」「この人は気を遣えない」といったように、偏見で相手を決めつけても何も解決しないということです。相手がタスクをこなせなかった背景には、その人なりの理由や価値観がありました。その人自身に対して、好奇心を持ち向き合う事は相手をより深く理解でき、結果として、異文化への適応もしやすくなると感じました。 

二つ目は、「経験を積むこと」です。
異なる言語、異なる国から来た人と関わる経験が少ないと、「違い」ばかりを意識してしまい、話すこと自体が心理的なハードルになってしまいます。その結果、自分を出せなくなり、環境にうまく対応できなくなってしまうこともあります。 

実際にさまざまな人と関わる中で私が感じたのは、言語はコミュニケーションの一つの要素にすぎないということです。ある程度意思疎通ができれば、好奇心や共感性、自分の意見を持つことなども、同じくらい重要だと感じました。言語が完璧でなくても、相手を理解しようとする姿勢や、自分なりの考えを伝えようとする姿勢は十分に伝わります。「言語ができないから異文化コミュニケーションはできない」と思い込むのではなく、自分が持っている他のスキルにも目を向け、自信を持って関わることが大切だと学びました。

異文化に適応する上で私が重要だと感じたのは、相手に対して、好奇心を持つことそして実際に経験を重ねることです。もちろん、言語や知識といったハードスキルは基盤として重要ですが、異文化適応能力をさらに高めるためには、このようなソフトスキルを意識することが不可欠だと考えます。これらは、自分の視野を広げ、異なる価値観、環境の中でも柔軟に生きていく力につながっていくと感じています。 

 

(執筆者:武田)


執筆者紹介

株式会社企業変革創造で8月からインターンをさせていただいている武田です。私は高校はアイルランド、大学はフランスのパリ政治学院、そして現在は、交換留学制度の一環として東京大学グローバル教育センターに在籍していて、国際的な経験を積んでいます。現在は“逆留学”のような形で、今までのヨーロッパでの経験と比べて日本で学べる新しい視点を楽しんでいます。Beyond the Borders というコラムの元、海外での学びや生活を通して感じた多様性・価値観・働き方などについて、グローバルな視点から発信しています。