#004 逆カルチャーショックから考える、日仏の学生生活とキャリア観の違い

Beyond the borders ~境界線を超えて~ #004

高校時代のアイルランド留学、そして、大学時代のフランスでの2年間。通算4年間の海外生活を経て、現在、私は日本の大学に在学しています。帰国後、かつては当たり前だと思っていた日本の日常に対し、「逆カルチャーショック」とも言える驚きを多々経験しました。

例えば、治安の良さを再認識したことはもちろんですが、フランスのスーパーが平日の夜早くに閉店し、週末は休業することも多いのに比べ、24時間営業のコンビニエンスストアが至る所にある環境には、改めて深い利便性を感じています。こうした日常生活の違いに加え、本稿では、特に日本とフランスにおける「学生生活の位置付け」の相違に着目してみたいと思います。

もちろん、大学や学部によって差はありますが、私が経験したフランスの大学には「学生の本分は学業である」という意識が強く根付いていました。そのため、生活の軸をアルバイトに置く学生は珍しく、多くの学生が学業に専念していました。単位取得のハードルも高く、授業中の発言、複数のレポート、プレゼンテーションなど多角的な評価指標が設けられており、相当な学習時間を割くことが前提となっています。また、2回以上の欠席で単位取得資格を失うといった厳格な運用も一般的でした。

対して、日本の大学では、試験のみで単位が認定されたり、出席点が成績の4割を占める授業があったりと、評価基準の多様さに驚きました。比較的単位を取得しやすい科目の選択肢も多く、学業にどれほどの比重を置くかは、学生本人の裁量に委ねられている側面が強いと感じます。しかし、これは、日本の大学生活が時間の使い方に柔軟性があるということでもあります。勉強以外の課外活動やインターンシップに注力できる点は、日本の大学ならではの良さだと言えます。

こうした違いの背景には、両国の採用文化の差があると考えられます。フランスでは入社時から「即戦力」としての経験が求められます。学歴のインフレも進んでおり、大手企業のホワイトカラー職では修士号(Master)の取得が事実上のエントリー条件となっています。そのため、学部課程はあくまで通過点であり、卒業後も通年採用の枠組みの中で複数のインターンを経験し、実務能力を証明して初めて正式なオファーを勝ち取るという流れが一般的です。

一方、日本では企業が新卒者をゼロから育成する「ポテンシャル採用」が主流です。そのため、大学3年次から一斉に就職活動が始まるシステムで、学部生活は「社会に出る前の自己探求と準備期間」としての性格を帯びています。

私自身、帰国後は日本の就職活動特有のスピード感に圧倒されました。ESの提出期限に追われ、OB訪問をこなす日々は骨の折れることでしたが、その過程で「自分の軸」を考えさせられる環境は、自己理解を深める有意義な機会となりました。新卒一括採用というシステムにプレッシャーを感じることもありますが、日仏両方の視点を持つことで、特定の価値観に縛られない柔軟なキャリア形成を見据えています。

 

執筆者紹介

株式会社企業変革創造で8月からインターンをさせていただいている武田です。私は高校はアイルランド、大学はフランスのパリ政治学院、そして現在は、交換留学制度の一環として東京大学グローバル教育センターに在籍していて、国際的な経験を積んでいます。現在は“逆留学”のような形で、今までのヨーロッパでの経験と比べて日本で学べる新しい視点を楽しんでいます。Beyond the Borders というコラムの元、海外での学びや生活を通して感じた多様性・価値観・働き方などについて、グローバルな視点から発信しています。