#007 留学を通して見直した目標設定のあり方

留学経験を通して、私の目標の立て方は大きく変化した。特に意識するようになったのは、「バランス」と「長期的視点」、そして「振り返り」の三つである。

まず一つ目は、「バランスを持ち、自分を制限しないこと」だ。留学初年度の私は、英語力の向上や各科目でのスコアなど、非常に具体的かつ学業に偏った目標を立てていた。一見すると明確で良い目標のように思えるが、今振り返ると、それは他の経験をしないための言い訳にもなっていた。

実際、私は趣味のバスケットボールやサッカーといったスポーツを半年ほどやめてしまった。勉強の妨げになると考えたからだ。しかしその結果、自分自身に過度なプレッシャーをかけ続け、思考が内向きに偏っていった。次第に勉強のモチベーションは低下し、勉強する理由の方向性を見失ってしまった。

そんな時、アイルランド人のホストマザーとの会話が転機となった。彼女は私の様子を心配し、「少し勉強から離れて、スポーツなどでリラックスするべきだ」と助言してくれた。日本では平日に4時間以上勉強することが当たり前とされる場面もあるが、アイルランドではそれはむしろ不健康と捉えられていた。

実際、ホストマザーは長時間勉強している私を見て、半ば強制的に犬の散歩に連れ出すこともあった。私が接した多くのアイルランド人の特徴はおおらかで「今」を楽しむという事を大切にしていた人が多かった。こうした価値観に触れたこともあり、私は再びバスケットボールに取り組むことにした。

当時のバスケットボールクラブは定期的な練習もなく、いわば形だけの存在だった。しかし私は「誰でも気軽に参加でき、楽しめる場にしたい」と考え、中学時代の経験を活かして練習プログラムを作成した。友人の協力も得ながら、学年を超えてメンバーを集め、週1回の活動を継続的に行うようにした。その結果、クラブは学校に正式に認められ、コーチもつくようになった。

この経験は、リーダーシップや人とのつながりを得ただけでなく、精神的な安定にも大きく寄与した。結果として、学業と趣味の両立が可能になった。そしてこの出来事をきっかけに、私は目標設定の際に学業だけでなく、健康・人間関係・趣味といった側面も含めて考えるようになった。一つのことに集中することは重要だが、それだけでは長期的に持続しない。むしろバランスを取ることが、結果として優先している目標の達成にもつながると実感している。

二つ目は、「短期と長期の両方の視点で目標を持つこと」である。高校時代の私は、「良い大学に進学すること」を最も長期的な目標としていた。しかし、大学進学をしてみると、あくまで通過点に過ぎなかったことに気づいた。その先にどのような人生を築きたいのかという視点が欠けていたと感じている。そのため大学時代からは意識的に3年後、10年後の目標まで考えるようになった。長期的な目標は変化するものではあるが、それを持つことで、より主体的に時間を使うことができるようになったと感じる。

そして三つ目は、「振り返りの重要性」である。私自身、目標を立てただけで満足し、行動に移せないことが多くあった。しかし設定した目標と現在の自分を照らし合わせる振り返りの時間を与えることで、一定の負荷が伴うが、ギャップを埋め、効果的な日々の行動につなげる役割を果たせると感じる。また同時に、自分の努力を正しく評価するためにも重要である。

高校2年次に書いたある振り返りでは、どれだけ努力しても物理科目の結果が出ないと、とても落ち込んでいる自分の姿が記録されている。しかしその後、最終的には物理の試験で満点を取ることができた。この記録は、今でも自分が落ち込んだときに見返している。どん底の状態でも状況は変わるという事実を思い出させてくれると同時に、自分の過去にした努力を見過ごさず自信を持つ糧となっている。

(執筆者:武田)


執筆者紹介

株式会社企業変革創造で8月からインターンをさせていただいている武田です。私は高校はアイルランド、大学はフランスのパリ政治学院、そして現在は、交換留学制度の一環として東京大学グローバル教育センターに在籍していて、国際的な経験を積んでいます。現在は“逆留学”のような形で、今までのヨーロッパでの経験と比べて日本で学べる新しい視点を楽しんでいます。Beyond the Borders というコラムの元、海外での学びや生活を通して感じた多様性・価値観・働き方などについて、グローバルな視点から発信しています。