#002 グローバルにビジネスをする上での、日本人アイデンティティーの理解の重要性

Beyond the Borders ~境界線を超えて~ #002

私はアイルランドへの留学初期、日本とは全く異なる文化に圧倒され、カルチャーショックの連続でした。私は文化に適応しようと必死になり、日本人らしさを捨てて周囲に溶け込もうとしました。しかし、かえって逆効果となり、自分自身を否定するような姿勢が、自信の喪失を招いたのです。今では、4年の留学経験を経て日本人としてのアイデンティティーを深く理解し、受け入れることが、グローバルにビジネスで活躍するための強力な武器になると確信しています。本コラムでは、その理由を主に3つ挙げて解説します。

1. コミュニケーション

まず、日本人としてのアイデンティティーは、グローバルなコミュニケーションを円滑に進める基盤となります。欧州をはじめとする海外では、日本の文化が生活に散らばっているため、親近感と好感度が非常に高いからです。

私の高校時代の授業でのエピソードが、これを象徴します。教師が「旅行で行きたい国はどこか」とクラスに質問したところ、スペイン、中国、ロシア、ドイツ、スイスなど多様な国籍の生徒がいる28人クラスで、実に22人以上が「日本」と答えました。(ちなみに円安になる前のことです)また、ユニクロや無印良品のようなブランドは海外で人気を博しています。こうした日常的な接点を通じて、海外の人々は日本を身近に感じているのです。そのため、アイデンティティーを否定せず、積極的に共有することで、海外の方とのアイスブレイクになり言語の壁があってもコミュニケーションが円滑になります。

2. 自身の源泉となり、積極性を生む

次に、自分のアイデンティティーを受け入れることで、内面的な自信が生まれ、発言力が向上します。逆に、否定しようとすると、周囲に過度に合わせる「イエスマン」的な印象を与え、芯のない人物と見なされかねません。これでは、建設的な議論ができず、対等な関係を築けません。日本人としてのアイデンティティーを肯定する事で、独自の価値観を基盤に、異なる意見を堂々と発信できるようになります。これは、ビジネスにおけるリーダーシップやイノベーションを促進する鍵となります。

3. 異文化理解を深め、相対的な視点を得る

最後に、日本人としての価値観を深く理解することで、他の文化との違いを相対的に把握し、異文化理解が高度化します。グローバルビジネスでは、多様なバックグラウンドを持つ人々との協力が不可欠ですが、文化の違いを無視すると誤解や摩擦が生じやすいものです。

図1ホフステードの6次元モデル

参考: CQラボ「ホフステード6次元モデルとは」, https://cqlab.com/hofstede-6models/

(参照日:2025年10月24日)

ここで役立つのが、文化比較のフレームワークであるホフステードの6次元モデルです。このモデルは、上の表に詳細が載っていますが、6つの次元で文化を分類します。例えば、日本は「不確実性の回避」が高く、慎重で計画的な傾向が強い一方、欧米諸国は低い場合が多く、リスクを取る文化です。日本人としての立ち位置を自覚すれば、他国の価値観を客観的に分析でき、適応策を立案しやすくなります。これにより、クロスカルチャーなプロジェクトで効果的なマネジメントが可能になります。

グローバルビジネスでは、多文化環境での適応力が求められますが、その前に私は日本人としてのアイデンティティーを理解し、受け入れることがその基盤になると考えています。皆さんも、国際的な環境で、自分のルーツを武器にして活躍しましょう!

(執筆者:武田)


執筆者紹介

株式会社企業変革創造で8月からインターンをさせていただいている武田です。私は高校はアイルランド、大学はフランスのパリ政治学院、そして現在は、交換留学制度の一環として東京大学グローバル教育センターに在籍しています。いわば“逆留学”のような形で、今までのヨーロッパでの経験と比べて日本で学べる新しい視点を楽しんでいます。Beyond the Borders というコラムの元、海外での学びや生活を通して感じた多様性・価値観・働き方などについて、グローバルな視点から発信してます